【金融市場レポート】顕在化し始めた信用リスク(その2)



前回の投稿はこちら 【金融市場レポート】顕在化し始めた信用リスク(その1)

膨張した「イージーマネー」

ここまで苦境に陥った企業群が、なぜ温存されているのでしょうか。 支えているのは、「イージーマネー」の存在だと考えられます。企業の資金調達はこの数年間で圧倒的に企業側に有利になっていました。それを端的に表しているのが、格付けは低いけれども高利回りである「ハイイールド債」や「レバレッジドローン」に対する投融資ブームです。

レバレッジドローン市場の規模は現在、米国だけで 1.1 兆ドル(約 120 兆円)に上り、この 6 年で 2 倍に膨れ上がっています。この流れは世界の債券市場でも加速しており、今年発行された債券の 7 割以上が格付 BB 以下(投資不適格)のハイイールド債となっているのです。この状況を受けて、英国中央銀行のカーニー総裁は 10 月の講演で「レバレッジドローンの急成長ぶりは金融危機前のサブプライムローンを彷彿とさせる」と発言しています。

しかも、資本比率や流動性の維持を定めた財務制限条項(コベナンツ)が付されていないローンも増加の一途を辿ります。これは、銀行や投資ファンド等による融資競争が激化しているためだと考えられます。
こうした「コベナンツ・ライト」と呼ばれる審査の甘い融資は、2008 年頃にはほとんどみられなかったのですが、今や欧米のローン全体の 75%を占めるまでに膨張した模様です。米 FRB 前議長のイエレン氏も 10 月の講演で、レバレッジドローンやそのコベナンツの緩みに対して強い懸念を表明しました。

この憂慮すべき状況、日本も例外ではありません。日銀が今年実施した、相対的に信用度の低い「ミドルリスク企業」向けの貸し出しに関するアンケートでは、「貸出金利が信用コストに見合っていない案件が多い、またはほとんど見合っていない」と回答した地銀は 5 割にも上る模様です。ならば金利を引き上げれば良いのでは、とも思いますが、それは「競争が厳しい」 ・ 「貸出先が納得しない」などとして、9 割の銀行が「金利引き上げは難しい」としています。

因みに、邦銀の貸出金利は過去最低の水準にあります。マイナス金利導入直後の 2016 年 3 月から、預貸スプレッドは 1%を切り始めました。それとともに、都市銀行と地方銀行との貸出金利の差も縮小し始め、リーマンショック当時には 0.3%程度だった金利差は、直近で 0.18%まで縮小しているのです。 地銀が、金利を下げて(リスクを引上げて)貸し出しを伸ばしている状況が垣間見えます。

地銀による海外貸出の拡大が目立つようになったのも最近の特徴です(前回レポートもご参照下さい)。2012 年ごろまでは都銀と同程度のペースでしたが、そこからは地銀の拡大ペースが都銀を大きく上回るようになりました。アベノミクス開始から直近 2018 年 9 月までの 6 年間で、都銀の海外貸出が 1.5 倍になったのに対し、地銀は同 2.6 倍に膨れ上がっています。もともとの母数が小さいとはいえ、都銀に比較して外貨調達も思うに任せない地銀にしては『目覚ましい快進撃』とも言えるでしょう。(続く)

 

次回の金融市場レポートは、2月1日(金)に掲載を予定しています。


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by Hoshino