【金融市場レポート】顕在化し始めた信用リスク(その3)

低格付け債券市場に現れていた「リスクオフ」の兆候

ところが、この状況には既に変化が始まっています。
今年度は(低格付け債券を中心に)世界の債券価格は下落(利回りは上昇)が顕著で、その投資リターンは 2008 年以降最悪です。実は、社債市場は一旦軟化し始めると、株式市場以上に怖い面があります。格付け条項というトリガーが極めて似通っているため、一旦格下げされると投資家が一斉に売り始めるという特徴があるからです。

また、債券市場は株式市場と異なり、「逆張り」が難しいのも特徴です。
企業が BB という投機的な格付けに陥った場合、当該企業の業績が改善し、社債の価格が反転するのには時間がかかります。株式のように、PBR(株価純資産倍率)が 1 倍を割れたからと見直しが入りはじめ、1・2 カ月で復調するというケースは滅多にありません。

しかも、企業が本当に経営難に陥った際には、後で倒産して管財人が否認しない限り、限られた資産から早目に差し押さえた債権者の勝ちとなります。仮に、資金の引き上げが始まると、そのスピードは速く、そうなると、格付け会社が「資金繰りの懸念が増した」と判断してさらに格下げする悪循環が開始。 従って「逆張り」できるのは、長期的視野に立ち、資金力があり、格付け条に項縛られない希少な投資家だけでしょう。社債市場には上場株式のような流動性はないため、流動性がなくなる前に売り抜けようという戦いになりやすいのです。

「リスクオフ相場」への対応

ある単語がどれだけ検索されたかを時系列で公開している web-site「グーグル・トレンド」を見ると、この秋以降、「zombie companies(ゾンビ企業:既述)」というフレーズの検索数が徐々に増加し、5-6 年ぶりの高水準に達しています。また同様に、 「financial crisis(金融危機)」もこの秋、2015 年 8 月に中国株が暴落したチャイナ・ショック以来の高い水準に到達したようです。

個人的には、『世界中の人々が、いわゆる“危機”に対して敏感になっている』証左だと思います。 歴史を振り返ってみても、後に「〇〇危機・××ショック」と呼ばれたどのような危機も、市場参加者の不安心理から発生したものだと言えるでしょう。市場関係者のマインドが危機を意識し始めている今、 中長期的に年金資産の運用を行う我々機関投資家だけではなく、投資のタイムホライズンが異なる全ての投資家が、こうしたリスクへの適時適切な対応策を考えるべきステージだと考えています。

個人的に初めての寄稿となったレポート「米国中間選挙後の金融市場の展望」から、全体として金融市場は『リスクオフ相場』に移行しつつあるとの認識をご案内してきました。そして今、その認識への確信度は相当に高まっています。当レポートが読者諸兄の投資活動の一助となれば幸甚です。(終わり)

 

次回の金融市場レポートは、2月中旬頃に掲載を予定しています。


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by Hoshino