EU離脱問題に揺れる欧州の今後を読み解く

最近、金融関係者を中心にEU離脱後を見据えての体制整備やその後の経済インパクトを心配する声が多く聞かれます。

ブレグジット(EU離脱)は2019年3月29日とされていますから、イギリスは、来年3月末にはEU加盟国から自動的に離脱することが決まっています。もう、本当にすぐなんですよね。しかも離脱よりも早くEUとの交渉合意期限がきますから、この数ヶ月の中で、今後どうなっていくのかがだんだん明確になっていくでしょう。

ここまでのところイギリスとEUとの交渉は難航していて、今後についてイギリス国内でも悲観的にみる人が増えています。

実際、ブレグジット後は、イギリス経済そしてEU経済はどうなっていくのでしょうか。
世界経済にも大きくインパクトがあるイギリスのブレグジット問題を今日は読み解いていきたいと思います。

イギリスが脱退に傾いた理由

なぜEUで大きな役割を担ってきて、EUという構想自体にも深く入り込んできたイギリスがEU脱退に傾いてしまったのでしょうか。

イギリス国民を「EU離脱」へ強く突き動かした要因として、「EU経済への不信」と「移民問題」が挙げられています。

ギリシャのデフォルト問題等、EU内で経済を焦げ付かせた国をEU内の経済が堅調な国が救うというアイディアや、イギリスの充実した福祉を目当てに流入してくる移民に対して、国民の理解が得られなかったことが、EU脱退という国民投票結果に繋がっていきました。

ブレグジットに至るまでのイギリスの動き

15年5月:イギリス総選挙
(キャメロン首相率いる保守党が過半数の326を上回る331議席を獲得。保守党による安定政権ができる。ただし、EU離脱の国民投票実施を公約
16年6月:イギリスのEU離脱是非を問う国民投票
離脱支持52%、残留支持48%のため、離脱指針を決定)
16年7月:メイ内閣発足
(キャメロン首相辞任。後任はテリーザ・メイ女史)
17年3月:メイ内閣によるEU離脱正式通知

2016年イギリスのEU離脱を問う国民投票で離脱支持が過半数を上回り離脱方針が決まった際には、世界中にショッキングなニュースとして報道されましたから記憶している方も多いでしょう。

イギリス、特に首都ロンドンは、EUの金融の中心地として大きな役割を担っており、EU離脱に伴う「単一パスポート制度」(金融業がスイスを除くEU域内で自由に営業できる制度)の行方を巡っては、ロンドンに欧州拠点を持つ企業にとっては重大な課題となっています。

実際、ブレグジットに伴い、ロンドンの役割を大幅に肩代わりしようとEU各地で誘致合戦が繰り返されていますが、今のところパリやフランクフルトへの拠点新設が目立っているようです。

すでに様々な企業が、ブレグジットを見据えて、新拠点を作り備えており、経済へのインパクトは、今時点でも大きいと言えます。
英国の単一パスポート制度がなくなったとしても、ビジネスが円滑に進むように先を見据えた対応が行われてはいますが、本当に制度がなくなったとしたら、各企業にさらなる大きな経済インパクトが強いられることになるでしょう。

難航するEUとの交渉

イギリスとしては、単一パスポート問題も変更せず、EU離脱だけをしたいと考えているようですが、EUとの交渉は難航しています。

英国議会やEU理事会での手続きを考慮すると、英国・EU間の最終合意の実質期限は今年の10月あるいは11月とされていますが、それまでの合意はかなり難しいでしょう。

また、両者は様々な混乱への緩和措置として2020年末まで英国がEUの関税同盟にとどまるという「移行期間」を設けることで暫定合意していますが、未解決の事案が残されたままであれば、この合意も白紙になってしまいます。

イギリスは、イギリス・EU共通のルールに基づいてモノの移動を事実上自由にする「自由貿易圏構想」を提案したり、経済的な打撃や混乱を避けるために必至ですが、対してEUは、他の離脱国がでないよう存続に必至で、噛み合わない両者の交渉は難航し続けています。

EU離脱の経済への影響は?

EU内でドイツの次に大きな経済規模を持つイギリスが離脱すれば、EU全体のGDPは17%以上縮小すると言われています。
また、イギリスは、ドイツ・フランスに次いでEUへの拠出額が大きいため、離脱によって、EUの予算の約12%が減ります。

これは当然、外国為替市場にとっても大きなインパクトを伴うでしょう。
イギリスのEU離脱交渉が決裂し、離脱条件がハードなものであればあるほど、EUROは下落していくのではないでしょうか。

また、EUROだけでなく、イギリスの通貨ポンドも下落してくことが予想されますし、リスク回避からのドルや円買いが急速に進んだり、株式市場でも、世界的な株安に繋がっていくと懸念されています。
さらに、銀行同士が資金のやり取りをする短期金融市場で資金が調達しづらくなれば、金融機関の破綻が起こる可能性もあります。

イギリスの輸出産業も打撃

イギリスの輸出の半分近くがEU向けで、EUからの離脱後は、現在は恩恵を受けている無関税がなくなり、関税が課せられる上、EUが自由貿易協定を結ぶ多くの国との貿易でも、離脱後は、協定のメリットを受けられなくなります。

イギリス財務省が発表したデータによると、離脱した場合、輸出や海外からの投資の落ち込みなどで、2030年のGDPは、6.2%前後縮小すると発表しています。

まとめ

イギリスにとってもEUにとっても、そして世界経済にとっても大きな打撃は避けられないブレグジットですが、イギリスでは再国民投票を求める声も広がっていますし、10月、11月に迎える最終交渉期限の行方も含め、ブレグジットがどうなるのかに今後注目していく必要があります。