【金融市場レポート】米国中間選挙後の金融市場の展望(その2)

市場への影響が想定される今後のイベント

こうした相場の状況に、センチメント面から影響を与え得るイベントとして注目されるのは、
1)トランプ政権閣僚人事( ≒ トランプ大統領のロシア疑惑に対する捜査の進展 )
2)11月末の米中首脳会談
3)来年1月から始まる日米物品貿易協定(TAG)交渉
だと思われます。

トランプ政権閣僚人事と今後の政策の見通し

まず1つ目は、セッションズ司法長官が今月7日・唐突に辞任したことから、事態は極めて流動的であり、現時点で予測することが非常に難しい情勢です。

今回のトランプ閣僚見直し人事の最初の『犠牲者』となったジェフ・セッションズ氏は、2016 年の大統領選でトランプ氏を支持した最初の上院議員でした。しかしながら、トランプ政権発足後、ロシアによる大統領選干渉疑惑が浮上した際に「モラー特別検察官が指揮する捜査への関与を避ける」と表明したことでトランプ大統領の大きな怒りを買った経緯があります。

なお、トランプ大統領がセッションズ氏の後任に据えたウィテカー司法長官主席補佐官は『モラー氏による捜査に“反対”の立場』を示しました。このため、民主党は今回の人事を捜査妨害だと強く非難しています。

今週月曜日には、トランプ大統領は閣僚などの高官3~5人の交代を検討していることをFOXニュースのインタビューで明らかにしました。解任候補として、メディアの報道では民主党が疑惑の追及を進めているロス商務長官、に加えマティス国防長官やケリー大統領主席補佐官の名前が挙がりました。マティス国防長官、ケリー大統領補佐官は安全保障政策において比較的穏健派と位置付けられています。セッションズ氏に続き彼らが更迭される展開となれば、トランプ政権の通商・外交政策が一段と強硬になることは間違いないでしょう。

残りの2つは、必ずしも経済見通しや市場のセンチメントに対してマイナスに働かない(むしろプラス)可能性があります。

米中関係の見通しと市場のリスクセンチメント

2)の米中関係では、中間選挙の少し前から「トランプ大統領の発言のトーンが前向きにシフト」した点が印象的です。トランプ氏は11月1日、中国の習近平国家主席と「長く、非常に良い対話を持った」とツイッターに投稿、その後も、貿易交渉における合意の可能性を示唆する報道が続きました。

個人的には米中貿易戦争の行方に必ずしも楽観的にはなれません。しかし、11月末の首脳会談に向けて、トランプ大統領の前向きな発言が今後も維持される、もしくは両国関係に目立った悪化がなかっただけでも、市場のリスクセンチメントの改善に貢献する可能性が高いと考えられます。

<為替条項>は再度市場の注目を集めるか?

3)日米のTAGについては、12月半ばに米国が「貿易交渉の主な目標」を示すことになっています。それを受け、交渉開始は来年1月半ばとなるとみられています。両国の交渉の末、協定に<為替条項>が入るかどうかが再び注目を集める可能性があるでしょう。

しかし、米国がメキシコ・カナダと結んだ新協定「USMCA」に盛り込まれた為替条項のほとんどの項目は、過去に国際通貨基金(IMF)協定や、先進7カ国(G7)、20カ国・地域(G20)の声明の中でうたわれています。また、外貨準備や為替介入実績の公表等は、日本では既に実施済みなのです。

つまり<為替条項>の導入は、日本の為替政策や金融政策の手足を縛るようなものではないといえます。そうした点が広く市場参加者に認識されれば、先月『リスク要因』として注目を浴びた<為替条項>は 市場のボラティリティを再び高める要因とはならないでしょう。

現在想定されるリスク

先週の金融レポートでも言及しましたが、個人的には、バブル的な様相を強めた株式市場やクレジット市場を中心に、トレンド変化の兆候が徐々に表れ始めたと考えています。特に、景気先行性の強い株式市場の変調には注意が必要です。『株価の急落 ⇒リスク許容度の急低下 ⇒流動性(信用)収縮 ⇒景気後退』の歴史的事例は枚挙に暇がないからです。

また、米欧の株式市場に変調が生じれば、当然ながら日本の株式市場にも波及してきます。 現象として、注意を喚起すべきデータがありますので、それをご紹介して本日のレポートを終わります。

◎:過去 40 日の市場変動性から算出する「日経平均株価」のヒストリカル・ボラティリティは、直近、今年の 3 月にかけて株価が調整色を再び強めた水準まで上昇してきました(今後、数か月軟調な展開となる可能性があります)。
近年人気を集めているリスクパリティ・ファンドは、過去の価格変動率をもとにリスクを計算・調整する仕組みとなっています。このため、今後、こういったファンドのポジション調整の引き金が機械的かつ自動的に引かれることで、市場が再度不安定化するリスクには警戒すべきだと考えています。

 

次回の金融市場レポートは、来週金曜日(11月30日)に掲載を予定しています。


【金融市場レポート】のコーナーでは、政治的なイベントや経済発表などを題材として、現状の分析や今後のマーケット予想などをお届けします。初回となる今回は、米国中間選挙後金融市場の展望を、今週と来週の2回に分けてご説明します。金融のエキスパートによる視座、視点が皆様のお役に立てば幸いです。

by Hoshino