【金融市場レポート】好調な金融市場に潜む重大なリスク(その1)

新興国での大規模な建設計画

かつてアラブ首長国連邦 最大の都市 最大の都市 ドバイで、「バブルの塔」と呼ばれた世界一の高層ビル「ブルジュ・ハリファ」が着工したのは、ミニバブル期とよばれた2004年でした。その後の景気後退によって、2010年の完成当初は入居者募集に苦しんだと言われています。

ところが、近年、新興国ではこうした大規模建設計画が相次いでいます。2015年に発表されたエジプトの新都市構想には、約7兆円が投入される予定です。また、今年の2月にはベトナムで、ハノイの北側にスマートシティーを建設する計画が発表されました。事業規模約4兆円とされるこのプロジェクトには、日本の民間企業や経済産業省も参画する予定になっています。

更に、昨年秋には、サウジアラビア・エジプト・ヨルダンの3ヵ国にまたがるメガシティー建設プロジェクトが明らかになりました。「NEOM(ネオム)」と呼ばれる当プロジェクトの事業規模総額は、約57兆円とまさに桁外れで、孫正義会長兼社長が率いるソフトバンクグループも参加する予定です。

新興国の債務は急激に膨張

こうした大型プロジェクトを支えているのは、未曾有の低金利で行き場を失った銀行融資であることに疑問の余地はありません。2008年のリーマン・ショック以降の10年間で、新興国の対外債務は膨張の一途をたどっています。

現在公表されているだけでも、官民を合計した負債総額(民間金融を除く)は約5600兆円にのぼっており、その3分の2にあたる約3660兆円の負債が2008年のリーマン・ショック後に積み上げられたものです。

自国の経済成長に見合った増加ならまだ理解できます。しかしながら、新興国の債務膨張のスピードは当該国のGDP成長率を大幅に上回っている上、対GDP債務比率はリーマン・ショック時点の2倍に迫る190%程度にまで上昇しているのです。

しかも、これらのマネーは、ドル建ての借り入れが大半を占めています。当該プロジェクトなどでは海外のエンジニアリング業者が主体になっているケースが多く、その支払いには基軸通貨(ドル)が選択されやすいためです。当該国の通貨が暴落すれば、その分返済負担が重くなる構図だといえるでしょう。

金融市場の動向

一方、主要な金融市場は今のところ、そこまで動揺していないように見えます。外貨準備の底堅さなどが緩和材料になっているのでしょう。しかし、その債務が急激に膨張しているため、対外債務に対する割合でみると、外貨準備は拡充しているとは必ずしも言えません。近年の経常収支の緩やかな改善も、あまりに急速に膨張した債務の前には力不足です。

しかも、最近の新興国に対する資金は、徐々にホットマネー化の様相を強めてきています。アルゼンチン、トルコ、フィリピンなど多くの新興国で、対外債務全体に占める短期債務の割合が増加しています。これらは、1年以内には期限が到来し、その時点の情勢次第で直ちに流出してしまいかねない、いわば「あてにならない資金」といえます。(続く)

次回の金融市場レポートは、来週金曜日(12月7日)に掲載を予定しています。


【金融市場レポート】のコーナーでは、政治的なイベントや経済発表などを題材として、現状の分析や今後のマーケット予想などをお届けします。初回となる今回は、米国中間選挙後金融市場の展望を、今週と来週の2回に分けてご説明します。金融のエキスパートによる視座、視点が皆様のお役に立てば幸いです。

by Hoshino